神にとって、それは取るに足らぬ一撃だった…はずだった。殊更に警戒する必要もなく、緩やかにかわすだけ…のはずだった。目の前を過ぎる炎…その後に走る赤い線…沸き起こる痛み。
神が斬られる
ありえない話だ。まして、それが目の前にいる人間の手によるなどと…
「この私が…こんな…
こんな…クズに…負ける…と…?
あり得ん! この私が…神が!」
信ジラレヌ
「神は…神は死なぬ!」
殺ス、コノガキヲ
「リュウをををを
さぁァだああああぁめのぉうぉこうおうぉぉ!
いいいいいいいいいひいぁぁああアアア!!!」
狂った声と共に異形の存在が姿を表す。何者にもたとえ難い、あのバルバロイでさえ普通の魔物に見えてしまう、恐怖の姿…。
だが、それはリュウにとって問題ではない。目の前に迫った「死」そのものを前に、正面から挑む覚悟は既にある。剣を手にしたまま全身の意識を心に集中させる。意識の中を記憶が過ぎ行く。
仲間の顔…世界の姿…
一瞬、意識が飛んだような気がした。目の前に迫った神の姿…しかし、今目の前にあるのは、砕けたクリスタルのかけらだけ。リュウの姿もない。
何が起きたのか?
顔を見合わせる3人の向こうで、赤いオーラが立つ。
「あれは…リュウ?」
弾かれたように走り出す。たどり着いた先にいたのは、異形の怪物…そして、オーラの主。炎を発する大剣を手に、怪物とにらみ合っている。
「ううううおをををぉぉぉオオオヲ…
小賢しい人だ
どこまでも神に逆らおうとするなんて
全く嘆かわしい…」
しばしの沈黙。
「いいでしょう…
あなたを殺して殺して殺してころしてコ ロ シ テ
コ・ロ・シ・テ あ げ ま しょ う…
そ し て…地上の生き物をすべて
殺して殺して殺して殺して殺して殺して
殺して殺して殺して殺して殺して殺し…」
「うるせぇ! てめえは…ぶっ潰す!」
神の声をさえぎるように放たれる一声と一振り。激しく燃え盛る炎は、開戦の狼煙。世界の運命を握る戦いが今、始まる。
Ende