静寂が支配する沈黙の世界…
光ささぬ深い夜の世界…
その最も深き場所を歩む者たちがいる。リーダーと思われる青い髪の少年、その手には身体に不釣合いなほどの大剣を持ち、並みいる異形の者どもを次々に切り伏せていく。彼…リュウの周りには彼と深い絆を以って結ばれた仲間がいる。
10年の間、苦楽を共にした相棒のボッシュ
因習により国を追われた皇女・ニーナ
言葉にならぬ想いを胸にリュウに従う少女・リンプー
「ここか」
まわりの生き物のような壁や床と比べれば、不釣合いとしか思えない聖堂。開けた場所で壁を背に建てられたその建物は、地上で見た大教会の建物によく似ている。あの忌まわしき記憶が蘇る。
「嫌だね…こんなの見るのさ…」
「そいつもここまで。さ、行くぜ!」
リュウが扉に手をかける。重い音を響かせ、扉が開く。中は思いのほか明るく、はるか向こうまで通路が続いているのがわかる。さらに進むと、やがて人の姿が見えてきた。
「ここまで来たのか…使命の子よ…ニカノルよ…」
その人物は法衣をまとい、十字架に張り付けられたように両腕を伸ばしている。
「ニカノルよ…まずは門が開いたことに感謝しよう…
門を通って、私は外に出よう…
そして、世界に祝福を与えよう…
"滅び"という名の…」
その言葉に、皆悟った。こいつこそがデスエバン! だが…
「全ての生命あるものが私をあがめ…
喜びを持って死を受け入れるだろう…」
「バッカじゃないの!?
何、勝手なことばっか言ってんだよ!
ニカノルって誰だよ!?」
そう、神の口から発せられたニカノルという名…この場にニカノルという名を持つ者はいない。
「お前たちは、ニカノルを知らないのか?
ニカノルというのは死者の名前だ…
お前たちの名前だ…」