「お前たちの名前だ」
その言葉を聞いた瞬間、リュウは奇妙な感覚に襲われた。身体が動かない。金縛りではなく、何かに閉じ込められたような感覚…。目は見えるが、耳は何も聞こえない…。目の前には透明な壁のようなものがあり、周りの明かりを受けて光っている。その壁の向こうで、神が続ける…
「オマエタチハ シンダ
ソノ くりすたるノ ナカデハ
モハヤ、セイニ イミハナイ…
オワルコトノナイ トキヲ シニツヅケルガヨイ」
唇の動きからわかるその言葉は、死の宣告。
「ダガ、カナシムコトハ ナイ
イズレ コノヨノ スベテノ イキモノガ
オマエタチノ アトヲ オウコトニ ナル…」
冗談じゃない。ここまで来て死んでたまるか! 言うことを聞け、俺の身体!
リュウを閉じ込めているクリスタルが砕け散る。
「ほう…それが、使命の子の力だというのか?」
剣を握り締め、神に迫るリュウ。
「…この私の力を、神の力を上回るとでも いうのか? …不愉快だな」
目の前から神の姿が消える。一瞬躊躇したリュウの背後に、何者かの気配が現れる。振り返るリュウの目に、クリスタルの前にたたずむ神が映る。
「リンプー…
戦うことでしか己を表せなかった
が…リュウの中に目に見える以外の
強さを見出した…」
まるで見てきたかのような言葉。続く言葉と光景がリュウに衝撃をもたらす。
「そして…今、この世から消える」
クリスタルが砕け、リンプーの姿が消える。造作も無く行われた破壊…その次の瞬間、リュウは神に斬りかかろうとしていた。バチッと音が響き、リュウの自由は再び奪われた。
「あなたはそこでおとなしく…仲間たちが砕けていくのを眺めていなさい…
これが…あなたと私の力の違いというものです…」
神は背を向けたまま、抑揚のない語調で言う。
「ボッシュ…
リュウと子供の時に出会い…
相棒としてつきあい…
今、この世から消える」
「ニーナ…
黒き翼故に王家を追われ…
しかし、王家のためを思い
その身を消し去ろうとしてきた…
そして今、願いが叶う
彼女はこの世から消える」
目の前で繰り広げられる破壊という名の消滅…必死に戒めを解こうとするリュウの身体は小刻みに震えている…。
「どうですか…リュウ
あなたたちのちっぽけな人生…神の手の上で簡単に崩れる
使命の子、勇者と言ったところで
より大きな力の前には流されていくことしかできない…
世界が私の前に滅びゆく間、己の無力をそこでかみしめていなさい…」